keep learning blog(キープラーニングブログ)

自分が興味を持ったことを備忘録として残すブログです。

13.風邪を引きました

――人間は誰でも体の中に百人の名医を持っている。――

ヒポクラテス

 

 

黒船がやってきた!

ああ、開国したつもりなんてないのに、ついに奴が私の中にやって来てしまった・・・。

f:id:yuki0718:20190916053013j:plain

 

序章

ある朝、目を覚ますと、私は身体の異変に気が付きました。鼻の微かな違和感、喉の奥を衝く鈍痛、全身の倦怠感・・・。おそらく、誰もが一度は寝起きに経験したことがあるであろう、あの感覚です。

前日まで兆候はまるでありませんでした。いつものようにスーパーで買い物し、家にバスで帰り、夕飯を作り、Amazon Primeのドラマをチェックして、熱いシャワーを浴び、歯を丁寧に磨いて、寝床に就きました。すべてが完璧な日常でした。

それなのに、ちょっと目を(意識を)離した隙に、私の身体はにっくき病魔に蝕まれていたのです。

とまあ、大げさな言い方をしてるだけで、ようするに北欧の秋を舐めていたらさっそく風邪を引きました。皆さんもまだ初秋だと油断していませんか。油断大敵ですので、お身体ご自愛くださいませ。

もはやブログに書けるプライベートな内容が底をついたため、そしてTex記法でゴリゴリ数式を書く気合いも風邪で奪われたため、今回はこのにっくき風邪について記事を書きたいと思います。

 

(What)風邪とはなんなのか

日本人なら誰もが経験のある「風邪(かぜ)」。実は、病気というにはあまりにも曖昧な概念だということをご存知でしょうか。

「風邪」とは、気道の上部に主要な症状(鼻水、鼻閉、くしゃみ、咽頭痛、咳など)を呈し、異なる種類に属する多数のウイルスによって引き起こされる症候群全般を言います。ライオンとジャガーとミーアキャットをまとめて「ネコ科」と言うくらい曖昧な概念です(嘘ですミーアキャットはマングース科です)。

さて、ここで重要なのは、異なる種類に属する多数のウイルスが原因だという点です。インフルエンザのように今年流行る風邪のワクチンが作れないのは、風邪はインフルエンザに比べて原因となるウイルスの種類が多すぎて、まったく的を絞れないからです。

そのため、薬局で売っている風邪薬を飲んだからといって、突如として風邪が治ったりはしません。倒すべき敵が分からない以上、薬にできることは対症療法*1に過ぎないのです。

敵が特定できないからには、医学は無力です。もはや私たちにできることは、人間自身が持つ自然治癒力、すなわち免疫力にすべてを委ねることだけです。

 

(When)いつ風邪にかかってしまうのか

人が風邪に感染して重症化してしまうのは、圧倒的に睡眠時が多いそうです。理由は、そもそも睡眠中は休息の時間なので免疫細胞が活性化していないのと、唾液の分泌が少なくなるためです。

一般的に、私たちの鼻や喉には粘膜というネバネバした水性の膜が張られており、これがウイルスの侵入を阻んでいます。しかし、唾液の分泌が減少した場合には喉の奥の粘膜が乾燥し、ウイルスに対する抵抗力が落ちます。そこを狙ってウイルスが増殖するのです。

また、睡眠中は胃酸も抑えられます。日中であれば、口に入ったウイルスは飲み込まれて胃酸により殺されますが、睡眠中はその働きも弱まり、乾いた粘膜の上でウイルスが増殖することを許してしまうのです。

 

(Where)風邪はどこにいるのか

風邪のウイルスは市中に蔓延しているばかりでなく、ときには家族や友人が外部から家に持ち帰ってくることさえあります。上述したとおり、ウイルスは侵入を阻もうとする粘膜の中で増殖するので、くしゃみ・咳・鼻水といった飛沫を介して他人の粘膜に触れる可能性がある限り、感染は避けられません。

したがって、この世界で、風邪の原因となるウイルスと無縁な生活を送ることは(南極のようなウイルス自体が生存不可能な環境を除き)不可能です。

それでは、家でアルコール消毒をこまめに行えば大丈夫でしょうか。実は、アルコール消毒は、風邪に関して言えばさほど有効な対策ではありません。市販されているアルコール消毒薬は、多くが人体に害のないレベルの濃度なので、ちょっとした食中毒原因菌くらいは確実に殺せるでしょうが、ウイルス全般に高い殺傷効果を発揮するとは限りません。

ウイルスに対してきわめて有効な消毒薬は、高水準消毒薬(過酢酸、グルタラール、フタラール)や中水準消毒薬(次亜塩素酸ナトリウムポビドンヨード)レベルであり、こんなものを日常の生活空間に常時バラまいたら、風邪よりもっと深刻な健康被害が起きそうな気もします。

そもそも、目に見えないだけで、私たちの皮膚や体内(腸内の乳酸菌など)には無数の細菌が共生しており、その微妙なバランスによって私たち人間は生かされています。みだりに消毒を行うことでそれらの細菌を殺してしまえば、病気を防ぐどころか、人体と細菌との共生のバランスを崩し、より深刻な病への呼び水となってしまう恐れすらあります。

 

(Why)なぜ風邪にかかってしまうのか

「風邪」と一言にいっても、その原因は人によって場合によって様々です。当たり前すぎて大変くだらないですが、主なものを列記してみます。

 

(1)ストレス

よく「病は気から」と言います。心が弱っていると自然と身体も同調して弱ってしまうものです。心の健康を保つのは身体の健康を保つよりずっと難しいですが、趣味を持つ、親しい家族・友人に相談する、果物を包装するプチプチをひたすら潰し続けるなど、ストレスをうまく解消する仕組みづくりが肝心です。

ストレスが蓄積すると、自律神経のバランスが乱れ、免疫グロブリン(の一種であるIgA抗体)の分泌が減少します。免疫グロブリンとは、鼻や喉の粘膜に存在する、ウイルスと戦う兵士のような存在です。ちなみに、哺乳類の母乳には免疫グロブリンが多く含まれており、赤ん坊を感染症から守っているそうです。

私の場合、特にストレスは感じていなかったのですが、慣れない海外生活で、無意識にストレスが蓄積していったのかもしれません。

 

(2)過労やオーバートレーニン

連日の残業などで疲れを溜めてしまうことも、風邪の原因です。デッドラインに余裕がある仕事は早々に切り上げて次の日に回した方が、身体のためにも良いですし、効率的な業務遂行に繋がります。

また、厳しいトレーニングを積み、アスリートのように肉体を鍛え上げれば免疫力が高まると思われがちですが、実は真逆です。適度な運動は免疫力をアップさせるものの、ラソンなどの激しい運動は、かえって免疫力を低下させるそうです。やるにしても軽い散歩程度がベストですね。

私は研究員なので、疲れるようなことは何もしていません。むしろ常に机に座ったままコンピュータとにらめっこしていて、コーヒーを淹れるために同僚とカフェコーナーに行くのが主な運動です。

 

(3)睡眠不足や就寝時の不規則性

過去の経験上、私の場合はこれが一番の原因です。多少は睡眠時間が短くても人間は慣れるものですが、毎日同じ時間に寝ないと体内時計が狂ってしまい、見事に体調を崩します。

なお、寝るときは、必ず眠くなってから寝床に入るべきです。眠れない日が続くと、脳が寝室を「眠れない場所」と認識してしまい、寝室に入るだけで緊張するようになり、不眠症の原因になります。目が冴えて眠れないときは思い切って寝室外(リビング等)へ行き、ハーブティーを淹れて本を読むなどして、眠くなってから寝室に戻りましょう。

私の場合、このところドラマやアニメを夜遅くまで見ていて、睡眠時間が不足しており、かつ、まばらになっていました。自業自得ですね。

 

(4)寒いのに薄着でいる

これは意外だと思われるかもしれませんが、医学的には、寒さと風邪との間に直接的な因果関係は発見されていないそうです。「風邪を引く」は英語で「Catch a cold」と言うのに、お母さんが子供に「風邪をひくから上着を着なさい!」と注意するのに、実は何の関係ないのです*2

しかし、どう考えても風邪が流行るのは冬です。その理由は、寒さのせいというよりは、冬の乾燥した空気、すなわち湿度の低下のせいだそうです。湿度が低下すると、人間の喉や鼻の粘膜の働きが弱くなったり、床に落ちていたウィルスが空気中に浮き上がりやすくなったりするので、風邪を引く確率が高くなります。

他方、寒い環境で耐えていると、体温を保つために体力を消耗するので、風邪を引いた後は確かに暖かくした方が良いそうです。厚着に予防効果はないけど治癒効果はある、と理解しておけばよさそうです。

ちなみに、私は夏パジャマのままデンマークの初秋を迎えたため、朝に「寒い!」と感じることが何度かありました。寝相が悪くて毛布を蹴飛ばしてしまったこともあります。でも関係ない・・・はずですねきっと。

 

(5)神の声に耳を傾けなかったから

「あなたが、もしあなたの神、主の声に良く聞き従い、その目に正しいと見られることを行い、その戒めに耳を傾け、すべての定めを守るならば、わたしは、かつてエジプトびとに下した病を一つもあなたに下さないであろう。(出エジプト記第15章26節)」

聖書にはこうあります。しかし私はキリスト教徒ではないので、神の戒めに耳を傾けることはありませんでした。とはいえ、規律ある規則正しい生活を心掛けることで病を遠ざけるというのは、仏教でも言われている世界共通の認識です。

 

(How)風邪をどう防ぎどう治すのか

風邪の防ぎ方は明らかです。規則正しい睡眠時間を心掛け、調和のとれた食事を摂り、疲れやストレスを溜めず、日常的に散歩程度の運動をし、他人の粘膜との接触を避け、特に寝るときは部屋内の湿度を高く保つ。これが最適解でしょう。

では、そうした予防策を講じたにも関わらず、風邪に罹ってしまったらどうすればよいのでしょうか。一般的な期間でいうと、健常者であれば症状を知覚してから2~3日目で症状のピークを迎え、7~10日目でほぼ平常時まで改善するものだそうです。そうでない場合は、著しく免疫力が低下しているか、別の病気を疑った方がよさそうです。

とはいえ、ただ7~10日間耐え忍ぶのも辛いものがあります。症状を和らげる手段としては、古今東西に様々な民間療法があります。食べ物ひとつとっても、はちみつ生姜湯、ハーブティー、りんごのすりおろし、おかゆ、チキンスープなどなど・・・。こうした風邪の民間療法が世界各地に存在することこそ、人類の歴史が風邪との闘いであったことの証左です。

信じるか信じないかはあなた次第ですが、Googleに英語で風邪の民間療法を聞いてみると、「コインで背中を擦る」、「お茶にコカ・コーラを入れて飲む」といった仰天のオリジナル療法が出てきたりして、なかなかおもしろいです。

最後に、医学的にエビデンスがある療法としては、鼻うがいがけっこう効果的だそうです。いきなりやるのは怖いので、以下のような商品を購入して試してみるとよいかもしれません。

hana-clean.com

 

今日のところは以上です。とりあえず一週間(7日)経過したので症状はかなり改善しました。長期間外国で生活するときには、パブロンゴールドのお徳用パックや頭痛薬などを日本で買いだめして、持っていくといいかもしれませんね。気休めですけど。

研究室の同僚も「日本のマスクや薬といった医療関係の製品は高品質で安いから爆買いするのは当たり前。あの価値に気が付いていないのは日本人だけ」と言っていました。ご想像どおり、中国人の方です*3

稚文をお読みいただきありがとうございました。

*1:対症療法とは、根治を目指さない、症状を和らげるだけの場当たり的な治療法のことです。

*2:寒い状態で耐える→精神的ストレス→免疫グロブリン減少、という間接的な関係はあるといえばあるでしょうけど。

*3:ちなみに、欧州でマスクをしていると「遷したら死に至るような重篤な病」とみなされるらしいです。飲食店でもない限り、日本のように日常的にマスクを身に着けている人はいません。海外旅行にいくときは日本の感覚でマスクを付けるのは止めた方がよさそうです。